学校に行かない経験も決して無駄ではない

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2019.03.15

北田真大( Kitada Mahiro)
元不登校の現心理学部生。主に大人や先輩など目上の人間との人間関係に失望し、中学1年生の夏休み明けから不登校となる。その後、森ノ宮のフリースクールにてカウンセラーの先生の手助けや、友人たちの支えを受け高校進学。現在は心理学マインドのある学校の先生を目指して日々勉強中!!

不登校のきっかけとなった二つの出来事

不登校になった時期はいつですか?

中1の夏休みからです。原因は二つありました。
一つ目は部活。
友達が沢山入ったという理由から、中学1年生の頃ラグビー部に入部しました。当時身長は180センチあり、走りも速かったことから、周りの先輩から入部当初期待されていました。しかし、その期待に応えられるような活躍ができませんでした。〈筆者も中学時代似た体験を…〉
二つ目は貯金箱。友人のトラブルに巻き込まれてしまいました。
簡単に言うと友人の金銭トラブルに巻き込まれてしまいました。僕はそのトラブルの現場に立ち会っており、僕自身は何もしていないにも関わらず、先生に犯人扱いされました。その時に「大人は自分の都合で動くのだな。目上の人ってこんなもんなんや」と感じました。
それから学校に行くのが当たり前だったけど行かなくなりました。
しかし学校に行かなくなってからも友達がいたから安心できて、それが救いでした。

自分も責めてしまった?

そうですね。。。
中1の冬とか中2の春くらいに母親から森ノ宮にあるフリースクールを教えてもらい、週3回月水金で通い出しました。そこでは運動をしたり、勉強をしたり、人とのコミュニケーションの取り方を教えてもらったりしました。
そこで出会った方が僕の大きなターニングポイントでした。

ターニングポイントとなった二つの出会い

どのような出会いがあったのですか?

二人の方との出会いがありました。
一人目はカウンセラーの先生。最初のイメージは「こいつ本当に先生か?」という感じです。20代後半の先生は友達のように思えました。すごく近い距離感で接する事ができました
二人目は、目標となる一つ上の先輩です。学校に行かなくても、スポーツもできるし、意見・発言も、勉強もできるし本当に「かっこいいな!!!」って思いました。そしてその時に「自分も変わりたいな」と思いました。

何か変化が起こりましたか?

正直、僕は学校に行っていなかったので、誰よりも中学の間、机の上の勉強に向き合うということはできませんでした。しかしながら僕は友人や、カウンセラーの先生方など周りにいる人の力を借りて「誰よりも自分自身には向き合えたぞ」という誇りを現在は持っています。これは僕が中学3年間で得た最も大きな学びです。
中学3年生の時には、それまで勉強がとても苦手でしたが最後何か頑張ってみようと思って、当時唯一好きだった理科をめちゃくちゃ勉強しました。
そしたらなんと84点とって学年上位になることができました!この経験が自信につながりました。

目標にしたい人を階段の10段目に

中学校卒業後はどのように過ごしましたか?

高校からは普通の定時制の高校に進学しました。何か変わりたいと思ってバレーボール部に入る決心をしました。高校から始めたバレーボールですが定通の全国大会に2回出場することができました。本当に人に恵まれているなと感じました。
そして高1と高3のときに「中学生に対して自分が感じたことを話してくれ」とお世話になったカウンセラーの先生からお願いされ、フリースクールで、子供たちに45分の授業をしました。そこでは大きく二つのことについて話しました。
一つ目は目標の大切さです。ここでは「この人かっこいいなとか、この人すげぇなって思う人いるかな?アニメでも何でも良い、目標にしたいこの人を階段の10段目にして1段ずつでいいから近づいていく努力を俺はしたんや。その過程によって変わっていく事があるよ。それも焦る必要はないだよ。この場所にはその階段をあがるサポートをしてくれるメンバーや先生が沢山おるよ。」と伝えました。
二つ目は1番大事な教科について。「1番大事な教科は何だと思いますか?」と質問をしたところ、子供たちからは様々な答えが返ってきましたが、私は「1番大事な教科は道徳です。」と答えました。
「学校に行けばそれなりに国語や数学ができるようになると思う。しかし君たちは今ここにおるんや。君たちも僕も人に傷つけられた経験を持っているからこそわかる事が多いと思う。人の気持ちを理解できる人になろうぜ。相手に気遣える人になろうぜ。そして中学や高校に戻る時に『このときの経験はよかったな。』と思えるようになれたらいいと思う。実際俺はそうやった。それを実現したいと思ったらそれをサポートする人は沢山いるよ。一人や無いんだよ。」
授業を聞いた後輩からのアンケートに「『ここにいることを活かす方法もあるんやで』という新しい発想もあるんだ。」という感想があり、とても嬉しかったです。

それぞれの個性が活かせる場所

学校に行っていなかったときに、あってほしかったことは何ですか?

心理学と教育の掛け合わせですね。
もし嫌なことがあったらカウンセラーと先生に相談する2パターンがあると思います。カウンセラーに相談する場合は嫌なことがあったあと。後追いになってしまう。しかし、先生だとその現場にいるため即座に対応できると思います。だから心理学を深く勉強した先生が多くいて欲しいです

学校の変わるべきところは何だと思いますか?

価値観の多様性です。
現在日本では、勉強できない人とゲームが好きな人<スポーツができる人<勉強ができる人、というような構造ができているように思えます。しかし僕は例え勉強ができなくても批判されない社会があって欲しいです。
それよりもむしろ、各個人が得意な分野や、好きな事を個性として伸ばしていくことが、積極的に肯定されるような価値観がもっと普及してほしいととても強く感じます。学校でも社会でも、適材適所に人が配置されるようなシステムができればいいな、と思います。それぞれの個性が活かせる場所に配置できるようになって欲しいです。

学校に行っていなかった時間は、どのように過ごしましたか?

中2の時はゲームやYouTube、本などを読んで家で過ごすことが多かったです。中3の時には月水フリースクールに通っていて、火木金は普通の学校に通っていました。
また、目標やビジョンを設定しました。僕はそのビジョンに近づくための第一歩として、一番最初は「勉強のこと」にするのではなく、「早起きをする」にしました。なぜかというと難しいものより、少し手の届く範囲のところのものからやってみて、小さな成功体験を積み重ねる方が良いと思ったからです。

今、学校に行かなくなった人・その家族へのメッセージをお願いします。

無駄なことはないよ!と伝えたいです。学校に行かないということに対して「自分は変なんだろうか」とか「自分はダメな奴なんじゃないか」と中学1年の学校に行かなくなった頃の僕は思っていました。しかし、今の僕はあの時学校に行っていなくて良かったなと心から思っています。それは、学校に行っていなかったからこそできた体験や、立つことのできた立場、自分なりの考え方など、今の僕にとってなくてはならない学びがあったからです。

今この記事を読んでいるあなたが抱えている辛さが、いつか他の誰かを勇気づける優しさになる日が来るかもしれません。今あなたが必死に戦っている現状が、いつか自分を支える経験になっているかもしれません。

僕は人生のいかなる経験も決して無駄ではないと思います。

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