冷暖自知

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2019.02.05

藤丸 正明(Fujimaru Tadaaki)
1983年8月26日、福岡県太宰府市生まれ 実家は天満宮参道の和菓子店。
2004年奈良大学入学。大学1年5月学生有志団体「地域活性局」設立。地域振興開始。
2007年(大学3年春)株式会社地域活性局設立。同年秋、奈良町情報館設立。
2009年経済産業省「社会の課題を営利的観点で解決するソーシャルビジネス」事業者に県内唯一選定。創業5周年記念式典にて「奈良で大茶会」企画を発表し、奈良の大社寺や茶道7 流派・奈良市の集う実行委員会を形成。 2013年から「珠光茶会」開始。
冬の閑散期に8000名を超える来場者を記録。現在、地域活性局の運営施設は年間約25万名の観光客を数える。また、社会的実績のある多くの方が顧問・相談役に就任している。
株式会社地域活性局代表取締役。

物の基本” 1+1=2” を教える学校に退屈さを感じていました

学校の先生とのやりとりで印象に残っているできごとは

高校生の頃、先生に「自分でこの学校を選んだのだから言うことを聞きなさい」と言われたことがありました。私は「生徒を選んだのは学校だ」と返しました(笑)。人が上から頭ごなしにしか物事を伝えることができない教育現場が嫌いでした。

学校に対してどんなことを思っていましたか

実家が和菓子店を経営しており、私が中学一年生の頃、父が独立しました。小さい頃から家を手伝い、父や様々な世界のお客様からお話しを聞くことができる環境にあったため、”1+1=2”を教える学校という場は退屈に感じました。生き方の手本となったのは父でした。父は私を信頼してくれていて、学校へ通うも通わないも、自分に選択をさせてくれました。学校へは、卒業できるギリギリの最低限の登校でした。

家庭環境の重要性を感じます。私は義務教育等で尊敬できる先生に出会うことができませんでしたが、父が生き方の手本でした。人が独立して、社会に果敢に挑戦します。その姿はキラキラしていました。働く大人の姿を身近に見ることができたのは非常に良かったと思います。現代社会では仕事というと会社勤めが多く、自営業者の姿を目にすることも少なくなってしまいました。昔は近所で働く大人の姿があり、子供も仕事への気づきがあったでしょう。今はそのような機会が減り、子供は社会に出てから“働くこと”を考えるのではないでしょうか。

人を愛し、愛されることが教育です

世代間での差を感じますか

成長過程で自分を取り巻く環境の差ですね。小さな成功体験の積み重ねが、将来、社会での活躍に繋がるように思います。「挑戦はやめておきなさい」と言われてしまう環境では、何も成し遂げられないまま時間が過ぎます。物事はやってみることが大事です。一度の失敗でもうダメだと思ってしまわないこと。壁を感じることも大切です。行動することに意味があるのです。

どのような教育が理想だと考えますか

日本の教育現場の歴史的事例に、吉田松陰の「松下村塾」があります。松陰が参加したのは僅か二年半でしたが、隣近所から多くの著名人を輩出しました。叔父の塾を引き継ぐ形で、松陰は関わります。彼は今でいう東大出のエリートですが、生徒には『とても教えることができる自分ではないけれど、一緒に勉強しましょう』という姿勢だったそうです。また、生徒を褒めることが上手で大変慕われていたそうです。松陰はその著書に”教える”の語源は”愛しむ”であると語っており、まずは自分が生徒を愛さないと、生徒にも愛されないと語っています。愛情がなければ、冒頭のどちらが選んだのかという稚拙な論争になってしまいます。人を愛し、人に愛されることが教育の基本だと思います。

人間の本質として、自分の少し年上の人を尊敬しやすいところがあります。教育とは尊敬できる相手と自分の似ている部分を見つけ、追いつこう・近づこうとすることと松陰は語っています。仕草さえ真似してみるなど、こうなりたいと毎日思い、真似し続けることで、だんだん理想の自分に近づいていくのです。尊敬する人は変わりますね。いろんな真似が自分を作ります。

まず触ってみること

成長にはどのような経験が必要だと思いますか

五感を鍛えて、様々なことに気付くことです。それは一回の体験で培われるものではありません。社会には一回だけではわからない部分が多く、慣れるまでには時間がかかります。

社会に出て自分が潰れないようにするには、社会性(知識・経験・ストレス耐性)が大事でしょう。社会性が身につく年齢は現代では23、24歳くらいでしょうか。昔よりもはるかに多くのスキルを求められる時代になっています。

その時代に合う自分を見つけるために色んな人に会い、面白い話を聞いてください。話を聞くだけでドキドキするような人が世の中にはいます。

禅の言葉に”冷暖自知”という言葉があります。物が冷たいか暖かいかは触って自分が知ってみないとわからないという意味です。自分で動いてみて、知る。それを何度も行うことで、何となく分かることが増えてきます。多くのものの中から、あっちがいいかな、こっちがいいかな、と見極めることを続けるうちに社会性というか、総合的な判断力が身につきます。そのためにはつまずくことも立派な経験です。

社会に出る前に学んでおいたほうが良いことは、例えば恋愛です。それに慣れている人は全てにおいて振る舞いがスマートなように感じます。

サンプルをたくさん持っている人が勝つ

今学校に通っていない人に向けて、何かメッセージをお願いします

社会で働いている人はすべてオリジナル、つまり独自の人生を歩んでいます。同じということは全くあり得ません。教育はその独自性に対して、普遍性を教える場所であるでしょう。独自性と普遍性が一つの人格となり、社会参加します。学校に行っていない以上、その普遍性を伸ばすことは難しいと思います。その分、独自性のあるものを磨く時間があるでしょう。もし、自分が‘見つけた’ものがあれば、それを磨いていきましょう。それが社会に認められた時、認められた本人も社会性を持ち始めるものです。

そして、『成功』とは、過去の断片的な成功事例の組み直しです。事例をたくさん知っている・持っている人が勝つと言えます。そして、成功しないとダメかというと、そういうわけでもありません。そこに至るまでの過程が大事です。行動する全てに意味があります。失敗を繰り返しながら、それを将来へどのように結びつけるかが大切です。人の一番素敵なところは、がんばる姿だと思います。頑張っている姿を見ると応援したくなるのは人情でしょうか。テレビなどでも誰かが頑張っている姿を見たことはあると思います。自分が頑張っているうちに応援してくれる人が増えて気付けば成功しているというのが社会で成功している人の例だと思います。

また、動き出せない自分も存在します。それは心の準備に時間がかかっていると考えていいでしょう。どんな立派な人にもその充電時間は存在します。

学校には全員が適合できるわけではないし、真面目に勉強したからといって真面目に育つとは限りません。学校に行かないと周りの目が気になったり、引け目を感じたりしてしまう時があるかもしれません。そこから飛び出すには、たくさんの刺激を受けることです。そして、一回でダメだと思い込んでしまわないことだと思います。自分で何かを考え行動して、結論を持つ。それが一つでもあれば、学校は怖くも何にもない気にならない場所になるでしょう。18歳で社会人になる必要もなく、22歳で就職する必要もありません。自分が自分で判断して生きていきましょう。自分で自分の歴史を作ってみてください。

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