生き方を選べる時代

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2019.02.05

カウンセラー(The Counselor)
カウンセリング事務所代表。30代。
人生、老けて見られることしかなかったが、最近ようやく若く見られようになった。
不登校という言葉を好まず、「あんまり(全然)学校に行かんかった時期」という言い方をすることが多い。
学校以外で学んだことの方が人生に役立ったことが多い、と思っている。
ただし学校で勉強しなかったツケとして試験には弱い、とも思っている。

良いこと・悪いことを見分ける力

今の職業に就いたキッカケは

高校二年生の頃に半年間、一人暮らしをしていました。私の場合、家庭内での悩みを抱えていたので、担任の先生がスクールカウンセラーをつけてくれました。家族を含むカウンセリングをしてくれ、結果、家庭内の雰囲気がやわらかくなり、効果を目の当たりにすることとなりました。それがキッカケです。現在、私自身もカウンセラーとして家族療法にも取り組んでいます。

どのような学校生活を送っていましたか

一人暮らしをしていた頃、生活のためにバイトを始め、クラブ活動を辞めたことによって毎日の過ごし方がガラリと変わりました。勉強も手につかず、学校に行く理由がなくなり、出席日数はギリギリでした。体育の時間から、終礼からの登校もよくありました。周囲から浮いてしまい、居場所もないように感じることもありました。

学校では体育の先生が気にかけてくれていたのを覚えています。みんなの前でではなく、2人きりの時に「あ、今日は来れたんやなー」と、さりげなく声をかけてきてくれたのが嬉しかったです。

当時は学歴を気にしていたので、既存のレールから外れることはショックでした。学内活動には興味を持てず、学外で様々な経験をしました。経験といっても良いことばかりではありません。学校に通っていない若者は時に法律的に問題のある行為に誘われやすく、自己防衛をする必要があります。友人関係としては、マジメな子・ヤンチャな子、どちらとも付き合っていたので、そのような相関図も俯瞰して見られていたように思います。

悪い事は若いうちにしておいたほうがいい、とは思いますね。大人になってから覚えた場合、加減が分からず歯止めが効かない人が多いのではないでしょうか。人は色々な経験を積んで年齢と共に変化しますが、その趣味嗜好が若いままで止まっている人を見ることがあります。良いこと・悪いことを見分ける力は若い頃に身につけておいたほうがいいです。

学校をもっと社会にオープンな場にしていければ

今の学校教育をどう思いますか

根拠のない校則や約束事で縛りが多く、生徒の「いいな」と思うことが抑制されているように感じます。学校で伸ばすスキルと社会が求める人物像がミスマッチを起こしているのに、昔のままのやり方を直そうとしないことは問題です。現在先進的な活躍をしている人たちを見れば明らかなように、彼らは学校の規則の範疇を飛び越えています。今の学校の教育が社会に出て役に立たないことは多くの人が気づいているはずです。日本人は英語を6年間も勉強しているのに喋られないのはなぜでしょう。もっと実りのある授業を増やさないと、学校に行く理由がなくなってしまいます。

どのような授業があればいいと思いますか

例えば、実際にその分野で活躍している人物を呼んでみてはいかがでしょう。つい先日、外を歩いていたら美容学校の生徒が模擬店舗を出店していて、髪を切ってもらいました。彼は自分の成果をすぐ先生にチェックしてもらい、その場で的確なアドバイスをもらっていました。生徒は実質的なテクニックを身につけられる、先生はノウハウを生徒に伝授できる、きれいにカットしてもらえた私も満足です。皆がウィンウィンになる構図が生まれていました。学校の現場においても内部で完結してしまわずに、卒業していったいろいろな生徒に講演・授業を依頼するなどして、もっと社会にオープンな場にしていければいいのではないでしょうか。

居場所としての高校を考えるなら、勉強をしなくてもいいスペースや学校に残って遊べる時間があればよかったですね。学校は「勉強しろ」とばかり生徒に言いますが、そんなこと言われなくてもその必要性は生徒自ら感じているはずです。友情関係を築く場を提供することも学校の大きな役割だと思います。

大学で言えば、各科目の教授以外に担任の先生がいればいいですね。ゼミはゼミで、各ゼミによって温度差が生まれてしまいがちなので、クラスがあってもいいのではと思います。小中高ではクラス分けによるイジメが問題になりますが、大学ではその代わりに”ボッチ”があります。まぁ、大学でボッチでも学外に居場所を見つけられればいいんですけどね。

理想を客観視してみること

夢や目標に向けてどのようにキャリアを形成できるのでしょうか

まず、夢と目標は別物です。夢を具体化して現実に落とし込まないと目標にはなりません。そのためには、夢の現場に接する機会を得ることが重要です。それが一体どういったものかを知らなければ行動を起こせないからです。サポートする側としては、夢を目標に変えられる環境づくりを手伝えればと思っています。

目標を立てても挫折してしまう場合もあります。また、誰かに何かを言われたことを理由に、外的な要因を内的に解決しようと歪んだ理想を持ってしまうこともあるでしょう。その時は理想を客体化してみることが必要です。自分の現実を正しく把握すれば目標設定が適していたかどうかを見直すことができます。

将来的な安定のために今の不安定に目を背けるのはナンセンス

今学校に通っていない人に向けて、何かメッセージをお願いします

「ダブっても諦めるな」ですね。今社会で活躍している人の中にも、留年組は意外とたくさんいます。行きたくなければ行かない時期があってもいいのです。学校はいつでも入り直せるのですから。

「レールの上に乗らなきゃ」という考えも持たないほうがいいですね。将来的な安定のために今の不安定に目を背けるのはナンセンスです。そもそも、いい大学を出ていい企業に入ったからといって、その先どうなるかなんて分からないのですから。生き方を選べる時代だとも言えますね。視野を広く持つことです。学校で習ってないから分からない、ではなく、現実のありのままを見る目を養うことです。上手くいかないことにも山ほど直面するでしょう。そのような場面にいかに折り合いをつけるかですね。

保護者さんには、過度な期待を押し付けないこと、何でも知ろうとしすぎないことを提案したいです。しんどい時に無理をさせることが正義ではなくなっている時代です。一方、「褒めて育てる」を実践したいものの、それだけでは社会を乗り越えられないジレンマがあり、私も試行錯誤しているところです。現代を上手にやりこなすコツを探求していきたいですね。

自分が自分らしく思えるといいのです。そのためには他者との適切な距離を保つことです。自分らしさを保つにはお金も必要だし、人に合わせることも求められます。しっかりやっていれば必ず評価されるのですが、その過程が今の世の中では見えにくくなっています。基礎能力を上げることは周りにもサポートしてもらえます。それを生かすのは自分自身だということを心がけていけばいいんじゃないでしょうか。

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